4.初めて東洋人が指揮をした
ニューイヤーコンサート2002

2002年1月2日7時半、NHKでウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のいつものニューイヤー・コンサートが始まった。現地では12月30、31日、そして1月1日に行われていて、その1月1日の模様が日本で毎年1月2日に放送されるのだ。しかし、今年は、いつもと違う。指揮者が小澤征爾さんなのだ!ニューイヤー・コンサート始まって以来、初めての東洋人指揮者。2002年9月からウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任することに敬意を表して、ウィーン・フィルが依頼したという。何と素晴らしいことだろう。小澤征爾さんの恩師、齋藤秀雄先生のまいた種が、数十年後にこんなに見事な大輪の花を咲かせたのだ。

いよいよ、黒のエレガントなスーツに包まれて小澤さんが登場した!演奏の前から、期待と興奮でドキドキする。ヨハン・シュトラウスの「行進曲/乾杯!」でコンサートは始まった。「ワルツ/カーニヴァルの使者」「ポルカ・マズルカ/おしゃべり女」「ワルツ/芸術家の生活」と、いつものようにポルカとワルツだけが次々と続く。ウィーン・フィルのいつもの音にもまして、軽やかだけど繊細でしなやかな音色の気がする。聞いているだけでウキウキする。思わず踊りたくなってしまう!

ウィーン・フィルのコンサートでは、アンコールが必ずワルツというほど、ウィーン・フィルとワルツは切り離せないものになっている。「真面目にやると面白いのよ。ユーモアがあり、ハーモニーチェンジなど、あっ!と思うところがある」「深いものがあると分かってきた。簡単なようだけど、やればやるほど難しい」「歴代の指揮者も決して軽く振っているわけではありません」と小澤さんはインタビューで述べている。

途中、「アンネン・ポルカ」では指揮台から降りて、1列目の奏者のすぐ前で指揮をするほど気合が入っていた。ワルツのやわらかい音から、だんだん強く弾むような音になるところなど、本当にゾクゾクする演奏だ。リハーサルにあたって、小澤さんはまた猛勉強をしたようで、ウィーン・フィルのヘルスベルク団長はその準備の入念さに感心していたとか。いつも思うのだが、演奏する全ての曲のスコアを暗記してリハーサルに臨むという小澤さんの頭って、どうなっているのだろう。

ニューイヤー・コンサートでは、毎年、新年ならではの楽しいサプライズな演出がある。太鼓が破れるというハプニングを演出していた年もあった。今年は何があるのかワクワクして待っていたら、アンコールの2曲目が始まった瞬間に、それは起きた。ビオラ奏者のひとりが、いきなり立ち上がって英語で「ハッピーニューイヤー」と言う。すると次にフルート奏者が立ち上がりフランス語で、その次にはビオラ奏者がイタリア語で、という風に、いろいろな国の言葉で新年の挨拶が次々と行われていった。ひとりが言うたびに客席からは、大きな拍手。そしてコンサートマスターのキュッヒルが日本語で「シンネン、オメデトウゴザイマス」と言うと、小澤さんが中国語でご挨拶。そして最後に、全員でドイツ語で言って、終わりとなった。この年、ユーロが元旦から流通することになり、進みつつあるEUの統合に敬意を表してこういう趣向となったらしいが、小澤さんとしてはきっと、EUだけでなくアジアの国々を含めた世界的な友好を願ってのことだったに違いない。

このハッピー・サプライズな演出の後、ニューイヤー・コンサート定番となっている「美しく青きドナウ」そして「ラデツキー行進曲」で演奏は終わった。ラデツキー行進曲で聴衆が一緒に拍手をするのも、いつものことなのだが、今年のそれは格別に楽しく見ることが出来た。これもオザワ・マジックなのだろうか。いつも全身全霊をこめて指揮する姿は、指揮者として、そして何より人としての魅力にあふれている。その指揮者を中心として奏者も聴衆も一体となっている楽しさが、テレビのこちらにまでしっかり伝わってきた。

コンサートが終わって団員と握手をし、聴衆の拍手に包まれる中、投げキッスをした小澤さん。こんな姿が見られるのも、ニューイヤー・コンサートならではのことだと思った。

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